あるとき、ビッグアイランドやマウイ島などハワイ諸島の自然百選的な写真集を見ていた友人の一人が唐突にハワイにはヘビはいないのかと、尋ねてきた。世界第2位の熱帯雨林を有するカウアイ島のジャングルなら何らかのヘビがいてもおかしくはないが、その友人の期待を裏切るようだが、わたしは即座にいないよと返事をした。しかし、これは正確ではない。なぜならば、ハワイにはヘビとは名前ばかりの、ミミズの親戚のような小さなヘビが1種類いるからだ。

名前は、ブラインド・スネーク。体長は15センチ前後、胴回りもミミズほどの太さで、色はほとんど黒に近い。名前のとおり視力がほとんどない夜行性のヘビで、日中は土のなかに隠れている。アリやシロアリなどを食べるという、人間にとっては無害で可愛らしいこのヘビは、ノースショアでもたくさん見ることができる。
以前思いがけず、友人の家のプールで溺れかけているブラインド・スネークを助けあげたことがある。プールに黒いヒモでも浮いているのかと思い、水から拾い上げたところ動きだしたので、初めてブラインド・スネークと分かったぐらいだ。夜中、もそもそと動き回り、プールに落ちてしまったのだろう。助け上げたのが午後の2時ごろだったから、ブラインド・スネークは、かれこれ半日は泳いでいたことになる。
また、ある日、農作業中に一度、ブラインド・スネークをくわで真二つにしてしまった。トカゲのしっぽのようにふたたび再生するかもしれないと思って、ふたつになったブラインド・スネークの胴をくっつけて土をかけておいた。その2~3日後にふたたび様子を見に行ったのだが、ブラインド・スネークの胴が再生されたようすはまったくなかった。
さて、ヘビがいないハワイの島々の生態系を守るため、世界中でもっとも厳しい監視体制をしいているハワイの動植物検疫官たちが今最も目を光らせているのが、グアム島で大繁殖しているブラウン・ツリー・スネーク(注1)というヘビだ。このヘビは、1940~50年代にニューギニアまたはソロモン諸島から積み荷に紛れてグアム島へ上陸し、それまでヘビのいなかったグアム島で大繁殖し、グアム島原産の鳥類を含めて島に棲息していた野鳥の卵をあっというまに食い尽くし、1970年代には9種類のグアム固有種と野鳥がほぼ全滅してしまった。さらに、このやっかいなヘビは、止まることをしらずグアム島内を荒らし回り、電柱に上り電線に食いつき島中の電気を停電させ、年間数百万ドルもの被害を与えるほどになってしまった。また、ブラウン・ツリー・スネークは、廃車になった車のなかとか倉庫や物置、家の天井付近などに棲みつき、老人・子どもたちから赤ん坊に至るまで誰彼かまわず噛みつきまくり、グアムの人々の切実な問題にもなっている。困り果てたグアム政府は、このブラウン・ツリー・スネークのおいしい食べ方、料理法を募集したりして、このヘビの退治を目指したが、いまだに大した効果は上がっていないという。

ハリケーンに自宅を吹き飛ばされるまでグアム島に住んでいたかっちゃん(川南活氏)もまた、グアム島在住時代、このヘビの餌食になっていた。夜、就寝中に突然天井から落ちてきたブラウン・ツリー・スネークに腹を噛まれたという。かっちゃんいわく「こいつらはとても攻撃的なんだよ、何たって、寝込みを襲うんだから」と。
ハワイでは、このブラウン・ツリー・スネークはグアムの基地から頻繁に飛行してくるアメリカ軍の飛行機の荷物室から何回か発見されてはいるが、いまのところ、ハワイ上陸を水際で阻止している、と検疫係り官は見ている。が、一部の専門家のあいだでは、すでにブラウン・ツリー・スネークは、オアフ島に侵入しているのではないかと、憂慮する。
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注1:
ブラウン・ツリー・スネーク(Brown Tree Snake)
学名:Boiga irregularis
日本名:ミナミ・オオガシラ
オーストラリア原産で、毒は持っていない。頭は大きくタマゴ型をしており、体長は3メートルになるが、胴は細くて長い。性格は攻撃的
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投稿者 paraisotaka : 2008年03月07日 07:48
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