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スイスイスイ、ノースショアの夏の乗り物、パドルボード

2007年04月20日

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ある夏が近づいた週末、隣に住む大家のジョージがいつもの笑顔で、


「ヘイ、モリシタ、ユー・ウォナ・バイ・マイ・ダカイン?」


と話しかけてきた。
なんでも、自分が使っていた愛用のパドルボードを売ってくれるという。ジョージは、去年新しく削ってもらったばかりのはずなのだが、すでにまた新しいパドルボードを手に入れたらしい。ジョージは、ガレージの奥からゴソゴソとエアキャップに包まれた、できたてのパドルボードを取りだし、前庭に持ってきた。サーフボードとボートの合の子のような形をした、そのパドルボードは12フィートの長さがあり、手にしてみると想像以上に軽い。


「テン・パウンド(約4.5kg)」


と、わたしが尋ねもしないのに、ジョージはしてやったりという顔で話す。ノースショアの男たちの自慢話というのは、だいたいがこの手の話だ。そのコバルト・ブルーに塗られたピカピカのパドルボードは、パドル仲間でもあるデニス・パングが上級者向けにシェイプした最新式のモデルであった。


パドルボードは、当時、ノースショアで最も話題のローカル・ブームになるほど人気が高く、カフクにあるタートル・ベイ・ヒルトンからハレイワまで、ノースショアのコースト・ラインを3戦に分けて縦走するパドルボード・レースが行われている。わたしも前からパドルボードを手に入れたくて、ジョージにいくらしたんだとか、誰か友達で中古のパドルボードを売りたいやつはいないのかなどと、パドルボードに興味津々だったので、ニュー・ダカインを手に入れたジョージは、さっそくわたしに話しをもちかけてきたのだ。


ノースショアで生まれ育ったジョージは、ノースショアを離れたことは生まれてこのかた一回だけという、根っからのローカルだ。ジョージのカミさん、ベッキーの実家、サウス・キャロライナに新婚旅行かたがた行ったのが最初で最後だと、変な自慢の仕方をする。サウス・キャロライナといえば、アメリカ国内、自慢するほどの話ではないのだが、ジョージは、そのぐらい生まれ育ったノースショアを愛してやまない。海外旅行なんて波乗りのトリップを含めて、まったく行きたいとは思わないという、超がつくローカルなのだ。


物覚えつくかつかないうちから海で遊んで育った彼は、いわば海の遊びのエキスパートなのだ。ジョージならば、一年中海にいてもまだ遊びたりないことだろう。以前、初めてウインド・サーフィンに誘ってくれたのもジョージだった。冬は波乗りに忙しいジョージも、波のない夏はどうしても暇がちになる。波も風もないということは、ダイビングには最適だから、タコ捕りにでも行けばいいのだが、毎日タコを捕ってもしょうがないと、ジョージはこぼす。そこで見つけだしたのがこのパドルボードだ。


Brian-Rochleau1.jpg


パドルボードは、もともと波のない夏の間にパドリングの力が落ちないためにと、1980年代はじめ、ノースショアのサーフボード・ビルダーが考え出した代物だ。初期のパドルボードは、サーフボードと同じ素材でつくられていた。通常、サーフボードは、発泡ウレタン・フォームにファイバー・グラスの布を巻きつけ、FRPコーティングで仕上げられている。波が比較的穏やかな夏にやるパドルボードは、強度はそれほど要らない。サーファーたちは、パドルボードで競争するようになり、パドルボードは、スピードと軽さが追及されるようになる。発泡ウレタン・フォームの代わりに、もっと軽い発泡スチロール・フォームを使い、強度を上げるためにファイバー・グラスの布を巻いた後にエポキシ樹脂でコーティングするようになった。形状も初期のカマボコ型から、カヤックのように船底が深く、ボディ自体もより流線型に進化してきている。


パドルボードの長さは、さまざまある。パドルボード・レースでは、長さによってクラス分けをしている。大きく分けて、全長12フィートまでのクラスと16フィート以上のクラスがある。一般的なパドルボードの部門は、長さ12フィート、メートル法に直すと335センチ28ミリ。16フィート以上の長さのパドルボードは、最近では長距離のレースに使われている。世界最長のレースといわれているカリフォルニアのカタリナ・レースでは、全長21フィート、足で操作する舵付きのパドルボードが登場している。また、1997年からハワイでもモロカイ・チャンネル・クロッシングという長距離のレースがはじまっている。このレースは、モロカイ島西岸からモロカイ海峡を横断しオアフ島東海岸へ渡る34マイルのロング・ディスタンス・レースだ。エキストリームな究極のパドルボード・レースは、パドルボードがひとつのスポーツとして定着した証なのだろう。


(パドルボード・レースへと、つづく・・・)
注:デニス・パング
デニス・パングは、ハワイで有名なシェーパーであり、ビッグ・ウエーバーとして知られる。と同時に、パドルボード・ビルダーの先駆者でもある。

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